2011年3月号 会員2欄

自転車の倒れるまでの一瞬を僕らは息を詰めて見つめる

天使舞い降りるがごとくいくすじの陽は差す冬の大黒ふ頭

インシュリン注射の針の冷えびえと父が肌えの粟立ちており

つまずいて着物の裾をひるがえし女歩めり夕の銀座に

祈るごとケータイ掲げる群れにいて無数の光る腕を見ていた

終電の床に転がる空き缶を見届けぬまま駅に降り立つ