2011年5月号 会員2欄

三枚の羽持つ風車ゆっくりと遠い海辺に発電をする

にぎり飯ほおばる昼の指先に餌の磯蚯蚓(いそめ)の残香を嗅ぐ

豚のデス・マスクの見あげるその先の空高く銀の米軍機往く

ラーゲリを生き延びし祖父をふるさとは赤き教授と呼びて疎みつ

床ずれに薬を塗られて祖父は見し南の国の鳥のまぼろし

少年のかたく握りし手の先のはるか高みに連凧は舞う*1

*1:『短歌人』2011年5月号 2011年4月27日に自宅へ到着。詠草は東日本大震災が発生した当日である3月11日朝に投函した。