短歌鑑賞

石川啄木 はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る『一握の砂』

石川啄木(いしかわたくぼく、1886年 - 1912年)のこの歌は歌集では、以下のように3行書きで表記された。はたらけど はたらけど猶わが生活楽にならざり ぢっと手を見る石川啄木『一握の砂』 (働けど働けどなお我が暮らし楽にならざりじっと手を見る) 《歌…

寺山修司 マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや 『寺山修司歌集』

マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや《歌意》マッチに火を点けると、火に照らされて海に霧が深く立ち込めている情景が浮かび上がる。私が命を捧げて守るに値するほどの祖国はあるのか。《解説》 場所は波止場、時間は夜に近い夕暮れだ…

石川啄木 東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる 『一握の砂』

東海の小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる石川啄木『一握の砂』《歌意》 東海(とうかい)の小島(こじま)に小さな磯(いそ)がある。その磯の中にある砂地に腰をおろして、私は泣きながら蟹(かに)とたわむれている。《解説》 磯には、黒っぽ…